2010年4月25日 (日)

子ども手当:国内居住要件は人種差別ではない

外国に居住する子供への手当に対して、禁じるべきであるという議論があり、これにいち早く民団が「人種差別だ」として反論した。国連人権委員会にまで書簡が送られたらしい。

しかし、こういった馬鹿げた反論に対して、政治家、官僚、世間一般から、今ひとつきちんとした反駁、あるいは、子供手当制度の趣旨の説明がなされていない。まるで、「人種差別」という魔法の言葉を浴びせられて思考が停止しているようである。この件は後で英語で書きたいのだが、今のところは簡単に日本語でメモしておく。

・子供手当制度の目的は、養育費のかかる世代を助ける事で日本国の経済力を押し上げること。長期的にも人口バランスを整える意味がある。マクロ経済の定式が示す通り、GDPは、主に国内での消費、投資、貯蓄の合計である。外国に送金されて消費されても、日本経済には何も貢献しないどころか、マイナスである。よって、目的に照らして、国内居住要件は人種差別ではない。むしろ必要要件である。効果がない分野への財政出動は、むしろ断罪(民主党の言葉で言えば、仕分け)されるべきである。

・子供が仮に日本国内に居住していても、特別永住者を除く外国人の子供の養育に、手当を出すのは止めるのが妥当である。親の仕事などで一時的に滞在する家族が多いと考えられ、この層の個々は日本の持続的経済成長には寄与しない。

・元々人間関係的に縁がなかった海外の子供(特に、発展途上国)との養子縁組は、それ自体が対象外である。なぜなら、こういった行為は、原則的に、養父母のボランティア、人道援助だからだ。血縁関係のない養子については、国内居住を要件とすべきである。

・費用対効果。特に海外の養子の場合、分かり切った事は、子供手当の申請者がほとんどを中抜きし、貨幣価値の小さい国へ見かけ騙しの送金をする程度だろう。つまり、効果どころか、費用面でも著しく原則を逸脱した決定(=一律定額支給)がなされており、許し難い。

まとめると、外国人の海外に居住する子供への支給は全て中止すべき。正式一時滞在中の外国人の、国内に居住する子供についても、支給しないのが妥当。日本人による海外養子縁組も対象外。

こういった制度を悪用する人種は大概決まっているようで、その所為か、民主党(長妻)はこの法案を穴だらけのまま押し切った。歴史に残る悪政である。

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2009年4月29日 (水)

パナソニックの駐在員家族への帰国指示は時代錯誤

豚由来の新型インフルエンザの流行を見据え、日本の企業数社、例えば、パナソニック、ホンダ、ヤマハが、駐在員の家族への「帰国指示」を出したと報道されている。

パナソニックの場合は、欧米を除くほぼ全世界に居住する家族に、9月末までに帰国するようにと指示を出した。大流行を予測しての事だという。

しかし、これは今の段階では過剰反応であると思われるし、少なくとも、会社が非従業員を「指示」する権限などないという意味で、私はこういった対処は時代錯誤だと思う。

まず、前者から言えば、流行が予測されても、毒性については普通のインフルエンザにきわめて近い可能性が結構ある。また、その点についての科学的見極めをしないで決定しつつも、期日を9月末と長く取っているのは整合性がない。

もっと問題の後者であるが、駐在員の家族は、その駐在員が働く会社のものではない。よって、指示する権限などあるはずがない。それは、一部では家族によかれと思って下した決定かもしれないが、そんなものは余計なお世話であって、リスクと現地生活をたたむ不利益を天秤にかけて、その家族自身が決めれば良いのだ。特に、駐在員の配偶者が別の現地企業で働いているとしよう。その配偶者は、別の会社と契約する労働者である。インフルエンザが流行するからと言って、むやみに自分のキャリアを無視されて帰国させられるとしたら、非情どころか人権の無視である。

所詮、日本企業にとって、駐在の派遣とは、家族丸ごと面倒を見るイベントであり、配偶者に想定するのは専業主婦なのだろうか? 反論としては、駐在員に通常の帰国命令が出たら、家族も帰るじゃないかというものが考えられる。しかし、駐在員が派遣される時は配偶者も同行したかもしれないが、通常でも帰国時はそうとは限らない。例えば、大学に通い続けたり、仕事の区切りが悪いという理由で、配偶者が駐在員より帰国を一年遅らせる事だってあるだろう。

5月17日補足:
ついに日本でも、二次感染がいつの間にか拡大していることが発覚した。アメリカでの2週間前と同じ地点に立っている。今更の帰国指示に、何の意味があろうか?むしろ、無用な人間の移動は、どちらかと言えば、感染者拡大に作用するはずだ。どうする、パナソニック?

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2006年1月20日 (金)

「所得格差はない」内閣府資料の稚拙

私は少子化と経済格差の拡大に関心があるのだが、2006年1月の月例閣僚会議に於いて、内閣府から経済格差は「統計データからは確認できない」とする資料が提出されたという。しかし、報道から見る限り、分析には拙い点が見られる。

「職業の有無によって所得格差が大きい高齢者世帯や、所得の少ない単身世帯の増加が、見かけ上格差を広げていると分析。国民の中流意識はこの10年間はほとんど変化がなく、欧米よりも高い水準にあると指摘している。」(共同)

まず、見かけ上の格差というのは非常に恣意的な概念だ。「所得の少ない単身世帯」の増加を、何故格差の計測から外す必要があるのか。現在若年労働者の数は減少を続けているのだから、それにもかかわらず、そういった世帯が増えていることは、明らかな経済格差の増大である。ここに見られるのは、晩婚化と、給与水準の低さ、及び伸び悩みではないか。経済格差が晩婚化(ひいては少子化)に拍車をかけていると考えるのが妥当だと思われる。

また、「国民の中流意識」という、平均的な日本人像を根拠に、生活水準に変化がないとしているが、これは格差の概念とは全く関連がないのは明らか。分散(σ)が増大すれば、平均値は同じでも、格差は生じている。

統計的に経済格差を確かめるには非常に時間がかかることは確かだ。一つの理由は、例えば正社員の減少と非正社員の増加という雇用形態の2極化が、給与水準の低下に反映されるまでにタイムラグがあること。もう一つは、所得格差を表す有効な指標として集計することが難しいこと。具体的には、その指数はGINI係数になるだろう。

しかし、こういった問題の場合、経済格差までの因果関係または相関関係が明確になるまで待っていては遅い。若年労働者の給与水準の低下、及び若年世代内部の給与格差の拡大は、経験的にも分かる程に顕著になっており、集計に表れるのは時間の問題だ。また、世代間格差については、給与のみならず、Public Social Expenditureの対象にも表れている。日本は他のOECD加盟国と比較して、現役世代への支出(サービスと健康保険を除く)が突出して低い。2001年、日本のGDPの18%がリタイヤ世代に支出されている一方で、現役世代への支出はたった1%だ。リタイヤ世代への支出額は、実は個々の国の年金など社会保障をめぐる政策によって大きくばらつきがあるだが、働いている世代への支出額は、概ね3-6%程度の範囲に収まる事が多い。(ただし、U.S., イタリアに限っては例外的に低く、それぞれ1%未満、及び1%強である。どちらも格差が大きい国である事を念頭に置いた方が良い。)

少子化についてのアンケートでも、収入の少なさを理由に理想の子供の数だけ産めないと回答する夫婦が多かった。内閣府は給与、社会保障の両面で、可処分所得に注目して経済格差を調査すべきだったと思う。また、ニートの問題は重要だが、経済格差に関する一部の原因に過ぎない。(ニートは職に就いておらず、求職もしていないので、そもそも可処分所得でなく賃金格差の比較に於いては、計算には入っていない可能性もありうる。)

経済格差の拡大と解釈できる現象の一つとして、健康保険未加入者の急増が挙げられる。昨年暮れから連載された毎日新聞の特集「縦並び社会・格差の現場から:患者になれない」によると、未加入が30万世帯に上るという。この報道は私にとって衝撃的だった。高齢者の中でも、格差の拡大は始まっているのだ。

ところで、上でGINI係数の取得の難しさを述べたが、実は、総務省は少なくとも2000年頃までのGINI係数データを持っており、それだけで判断しても所得格差は開いているのである。橘木俊詔氏が昨年英語で出版した本に推移が掲載されていた。

Toshiaki Tachibanaki
"Confronting Income Inequality in Japan - A comparative analysis of causes, consequences, and reform"
The MIT Press 2005

また、朝日新聞の報道によると、OECDが2004年のGINI係数を発表しており、加盟国間の比較が出来る。それによると、日本のGINI係数はやはり上昇傾向にあり、日本より不平等な加盟国はもはやアメリカ等数ヶ国しかないとのこと。取材に対して橘木氏が指摘しているが、OECDのGINI係数は家族数の変化に応じて調整した所得を元に算出しているので、核家族化が原因という内閣府の説明は意味をなさないらしい。

内閣府がこのようなレポートをまとめるのは、小泉政権を擁護する意図があるのかと勘ぐりたくなる程、分析内容には違和感を感じる。(例えば、外務省のチャイナスクールが、中国へのODAを減額したくないがために、中国の経済発展を過小評価し続けたように。)

少子化の問題については、改めて記事を掲載する予定。

追記:本記事は、検索キーワードによっては、内閣府の経済社会総合研究所(ESRI)なども押しのけて、Googleの検索結果のトップに表示されます。突貫で書いた文章がこのように知られるのは恐縮の至りです。ただ、皮肉なことに、第2位に来るそのESRIの2005年5月のディスカッションペーパーにおいて、若年層において労働所得格差の拡大ペースが速くなっているという結論があります。(太田清 ESRI Discussion Paper Series No.140 『フリーターの増加と労働所得格差の拡大』)内閣府はどうなっているのでしょうか?

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